大阪障害者センター 壁ニュース

2024年障害福祉サービス等報酬改定をどう見るのか!~日本障害者センターが学習会を開催

「壁ニュース」テキスト版 2024/02/28

2024年障害福祉サービス等報酬改定をどう見るのか!
~日本障害者センターが学習会を開催、パブコメへの対応も!~

 現在、2024年度の「障害福祉サービス費の報酬改定」について、案が提示され、パブリックコメントの募集が、3・6締め切りで公募されています。
 介護報酬等では、「居宅介護費」の単価引き下げに大きな批判の声が上がっていますが、同様に今後の制度の根幹をなす改定だけに大きな注目が求められます。
 日本障害者センターでは二度にわたり、元報酬改定検討チームの平野方紹氏(元立教大学コミュニティ福祉学部教授)を招き、報酬改定を考える学習会を開催しています。ここでは、第二回目の2.24の学習会の骨子をご紹介します。
※詳細は、日本障害者センターで見逃し配信もありますのでお問い合わせください。

【日本障害者センター報酬改定を考える学習会②】
 2024年障害福祉サービス等報酬改定をどう見るのか〈第2回〉報酬改定の狙いと内容、問題点
 平野方紹(元立教大学コミュニティ福祉学部教授) 
〇期待を裏切るようで恐縮ですがここでのお話しは、こうすれば改定された報酬体系で「もうけられる」という〇〇セミナーのような経営ノウハウではありません。甘い話をそのまま信じると危ないようです!
〇報酬改定から見えてくる政策意図を読み取りながら、個々の施設・事業所をどう経営してゆくのかを探ります。
〇政策の理念・意図と現実が大きく乖離していることを踏まえて、政策に振り回されない「賢さ」が経営者には期待されています。
前回のおさらい
〇今回の報酬改定は、国の厳しい「社会保障削減」政策下で行われているもので、社会保障全体の転換が求められています。
〇障害独自の問題としては、「理念(政策意図)が先行(一人歩き)し、現実と乖離している」ことがあげられます。
※「パイの理論」と社会福祉の展開
前回のおさらい②経済環境は確実に悪化!/「パイの理論」とは逆行する現象
※国費削減の意図!
2024年報酬改定で決まっていること
〇改定率とは、報酬全体体系全体の改定の比率であり、現在の単価に(+1.12%)というわけではない(人事院勧告と同じ)
〇新しいサービスや加算などもあり、均等に配分されることはない
〇当然、政策的に誘導するために「メリハリ」がつけられる。どう考えても無理があります!
福祉人材対策
〇2023年の賃上げ率は3.1%どうやっても追いつかない!
〇2023年の物価上昇率は3.2%だんだん状況は悪化する!
〇これまでの報酬改定はデフレであったが、今回はインフレ下での改定、これで良いのか?前例踏襲では無理!
※人件費が課題とされるが?
※人材不足は障害福祉ではもっと深刻!
〇サービス形態が介護とは違う
・長時間サービスが多い重度訪問介護、行動援護、同行援護、共同生活援助など長時間にわたるサービスがある
・利用頻度が違う……介護のデイは週2〜3回が主流だが、就労移行・継続Aは原則週5生活介護・継続Bも(放課後デイ、児童発達なども同様)
〇介護の事業所はあっても障害の事業所のない市町村は多い!
サービス供給が限定されれば、どちらを優先するのか
障害福祉人材の特性
〇現状は、①少子化・福祉離れによる新規就労者の減少、②賃金格差・労働環境による流入者の減少、③他分野への流失者の増加という「トリプルジレンマ(三重苦)」!

〇政策意図や投資効果はわかりますが、加算による処遇改善は民間の「賃上げ」とは訳が違います!申請しなければならず、条件もあり不安定で、使途も制限されます。本来は報酬本体の大幅な引き上げで対応することが理想でしょう。
〇人材確保を謳うのであれば、人事院勧告並(大学卒初任級5.9%UP)の大幅な改善でなければ効果は期待できません。
〇報酬改定は、ただ「単価」を見直すだけでなく、制度改正や政策誘導的で、その意図をしっかりと抑える必要があります。
〇表を見ればおわかりのとおり、これまで何度も職員の「処遇改善」が報酬改定に
盛り込まれており、それを単純積算すると10.64%UPとなります。
しかし、現場の給与水準は厚労省も認めるとおり、一般職場との格差は解消されておらず、改善効果は期待通りではありません。(加算の限界、現実との乖離)

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容
※中核と集中! ポイントは実体化と実績主義
•現行の処遇改善加算の一本化及び加算率の引き上げ※2024報酬改定の注目点!
〇重点は「地域移行促進」(「重度障害対応」(加算の設定・増額)「医療的ケア児者対応」(加算の設定・増額)
「65歳の壁」を考える
〇「65歳の壁」は、介護保険への移行に伴う問題ですが、それだけではありません。
〇「地域での生活支援」「脱施設」「施設から地域へ」を謳った介護保険は、その後方向転換し、施設整備・促進を進めました。
また特養やGHに「地域移行」を求めることはなく、「終の棲家」としての役割を担わせています。
※強度行動障害加算・研修評価!集中支援加算、単価は上げるが、実態は厳しい
※GH/一人暮らし支援の義務化!実績主義、義務化に向けて!
※自立生活援助・集中加算!
・ノーマライゼーションの観点からすれば、同年代と同じ生活を営むこと=「ドラマやCMでの独立した生活」を基準に(家族に依存しない!)
〇焦点は生活介護(一番大きい経費/報酬体系の変更)
 就労系訓練(定員、評価区分)、障害児は発達支援センターを中軸にした体系に(事業が減らない発達支援、放課後デイは地域サービス化)
※今までと同じことでは対応できない!
〇事業所の利用定員での一律単価はなくなる
〇このため短時間営業の減算は廃止される
〇定員下限は5名以下から
〇「広く浅く」から「狭く深く」「適正利用」へ
※計画の内容で報酬が決まる!
〇基本的には事業所の利用定員と利用者の支援計画上の「所要時間」で報酬が決まる
〇これまでは事業所の条件(定員・営業時間)で利用者は一律だったが、今後は
利用者毎に報酬は異なってくる
※入所施設での利用も同様の扱い!
※就労系
・サビ管の業務の明確化
・A型:〇評価項目の②項目追加だけでなくマイナス評価が導入された
 労働時間・生産活動という数値的評価が高くなり、多様な働き・地域連携活動などの質的評価は減点されています。実績主義の強化
・B型:〇平均工賃額の算定方式が変更され、短時間利用者には有利
〇特例の年金受給者2千円上乗せは廃止平均工賃金額が下がる)/実体化
〇職員配置6対1を標準化し従来の7.5対1は減額
※短時間減算
・就労移行/研修必置で先送り
・障害児/〇発達支援センターを一本化し、機能をめて中核拠点化する
※放デイ/〇⽀援プログラムが策定・公表されなければ減算
〇30分未満は報酬の対象とならない
〇一律単価ではなく利用実績で区分する。
〇指導員を常勤ベースで配置することが原則化
〇今後の課題は?
(詳細略)

障害福祉をどう進めるのか①
〇時間的制約から、2024報酬改定の全てをお話しできたわけではありません。特徴的な点と事業経営を進める上で抑えておくべき点に絞ってお話ししています。
〇今回は触れられませんが、相談支援など、細かい点で見直しがあります。確かに金額的には大きな変動はありませんが、どんな方向に進めようとしているかを読み取って、障害者や家族が安心できる福祉の実現を図る運動が重要です!
〇重要課題となっている「福祉人材確保」については、賃金の引き上げは重要ですが、それと合わせて、「障害福祉の仕事は、やりがいのある魅力的な仕事である」ことと「福祉の職場は、働きやすい、安定した仕事である」ことをしっかりと訴えて、創っていくことです。
〇「障害福祉をやりたい!」と思ってもらえる人をどれだけ増やせるかが課せられた課題だと思います。
報酬は経営の基礎条件ですが、仕事の中身まで拘束されるわけではありません。
それぞれの地域にマッチした福祉を創ることが大事だと思います。みなさんのご活躍を祈念しています。
※詳細は、日本障害者センターまで!
 
 こうした政策誘導の内容をよく見定め、真に制度の存続や意義を高めていくための対応を含め、現場からの具体的対応が求められるとともに、こうした内容を精査したうえでの今後の運動の在り方も問われることとなりそうです。
 引き続きこの動向には注目が必要です。

きょうされが、提案されている報酬改定についての見解を発表しています。下記のURLからアクセスして下さい。
https://www.kyosaren.or.jp/motion/25288/