「市町村支援費制度実施状況調査」の報告
事務局;障害者(児)を守る全大阪連絡協議会
平成15年4月から障害者福祉における支援費制度が実施されました。
私ども障害者とその家族、関係者は、今回の制度移行が障害者の自立を促進し、親・家族の生活をよりよくするものとなるよう心から願ってきました。
しかし実態は、基盤整備が国の財源保障が不十分な中、申請や決定において様々な問題が生じていることなどが報告されています。
昨年、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会では、「支援費制度施行準備に関する調査」を実施し、厚生労働省への実態を踏まえた働きかけを行ってきたところですが、残念ながら依然多くの課題を積み残したまま今日にいたっています。
こうした事態の中で「支援費制度施行状況に関する調査」を各市町村にお願いし、各市町村における支援費制度の実施状況をとりまとめましたので、その内容を公表させていただきます。(なお、この結果は、すでに各市町村には報告書として郵送しています。)
1;調査結果の概要は
(回収率)100%(33市11町村;8/22現在)であった。
(結果の概要)
☆非常に低い身体障害者の申請率、不服申請は府下で16名
☆各種審査会の設置率も低く、決定内容の客観性に不安
☆特別な相談窓口の設置のない中、申請は結局個人責任?
☆市町村ごとに異なる「決定の基準」、決定内容にばらつきが!
☆「利用にあたってのあっせん・調整・要請」も行政に担当者任せ、実際の利用に大きな不安
☆ 大阪府の制度の穴埋め単独事業、でも市町村の受け止めは消極的
☆遅れる供給基盤整備、デイサービス、ショートスティ、施設の不足は深刻
☆ 各自治体でも、制度の見通しに大きな不安、制度見直しを要望する声も
(私たちの大阪府への要望)
☆実施状況の把握の手法と市町村への指導。
☆大阪府単独事業の市町村実施見通しと来年度予算化の見通し
(1) 障害児(者)短期入所事業送迎補助事業
(2) 障害者ケアマネジメント体制整備推進モデル事業
(3) 施設入所者ガイドヘルパー派遣事業
(4) 障害児デイサービス推進事業
(5) グループホーム運営安定化事業
☆支援センターの位置づけとケアプラン等の役割と権限はどうするのか。
☆市町村の「あっせん・調整・要請」の機能と、障害者が事業者と円滑に契約が結べるための市町村責任とそれへの指導。また、不服審査のシステム改善。
☆居宅介護事業者への指導
(1) 家族支援、月極契約における緊急時の対応
(2) 中抜きガイド
(3) 買い物の付添
(4) 土日、夜間・深夜の対応の拡大
(個別課題)
☆緊急やむを得ない場合等、「措置制度」の柔軟な活用の範囲。
☆基盤整備状況の認識。特に居宅デイ、ショート、施設は?
☆市町村ガイドラインの把握と格差是正の方向性。(府として基準化の検討会を)
イ、上限設定、ショートの一律的日数
ロ、移動介護における「身体介護要・不要」の基準
ハ、児童居宅介護における移動介護の決定基準等
☆併用禁止事項や、通学・通所における移動介護の活用にあたっては、入院時の付添等実態に即した柔軟な対応への方向性。
☆介護保険制度との関係について、実態にあった運用の徹底。
☆更新にあたって、「利用されなかった事を理由」とした、支給量の減量をどうするか。
☆緊急的対応を必要とする短期入所事業・デイサービス等への対応。
☆短期入所等における、特定日常経費負担について、生活保護世帯等への救済問題。
☆供給基盤の未整備によって生じる、デイサービス事業等活用のための送迎費補助制度の創設。
☆リストラ等の影響で、本年度所得の激減した利用者及び扶養義務者の利用料の減免制度。
☆ 医療的ケアーを必要とする人たちへの支援制度。
(市町村への要望)
1.大阪府が実施している、障害児(者)短期入所事業送迎補助事業、障害者ケアマネジメント体制整備推進モデル事業、施設入所者ガイドヘルパー派遣事業、障害児デイサービス推進事業、グループホーム運営安定化事業を実施してください。
2. 居宅生活支援事業所、施設訓練等支援事業所を整備するとともに、「あっせん・調整・要請」の機能を強化し、障害者が事業者と円滑に契約が結べるようにしてください。
3. 障害者の日中活動の保障の場として、小規模作業所の運営の安定化が図れるよう、補助制度の維持・充実を図ると共に、希望する作業所が、小規模通所授産施設等への移行が可能となるような補助制度を創設してください。
4. 事業所・施設の運営を安定化させ、そこで働く労働者の身分保障が十分行えるよう、支援費単価の改定を強く国に働きかけてください。
2;全国調査の結果
全国市町村支援費制度実施 状況調査報告
=真に「選択・自己決定」できる制度への緊急の改善を=
☆調査の方法と特徴
・全国市町村に対する書面又はEメールによるアンケート方式
・各自治体の7月段階での状況調査
・回収数;八月末現在 717市町村(45都道府県)(299市区、418町村)
・有効回答数669市区町村(277市区、392町村)
☆調査の概要
○極端に低い身体障害者の申請率
○審査会は未設置
○ケアプランも未作成
○広がる市町村格差
○制度活用は、利用者責任?
○遅れる供給基盤整備
○強まる制度改善への要望
☆緊急な制度改善への提案 =真に「選択・自己決定」できる制度とするために=
・「決定内容」における市町村格差の是正
・「家族依存型」の居宅介護からの脱皮と、扶養義務者負担制度の撤廃を
・ケアプラン作成への支援策の改善
・制度運用や活用における市町村責任の明確化
・併用禁止規定等の見直し
・緊急の基盤整備
・制度運用上の「事業者」への「障害者支援内容」の徹底
3;今後の取り組み方について
☆ この調査結果を受けて、大阪府との学習会を開催(9/11)、今後、この結果をもって、大阪府下の全市町村に対して、「障害者・家族の立場にたった支援費制度の運用を求める要望書」を提出しながら、制度改善への取り組みを行う予定。市町村訪問活動の取り組みは、障害者(児)を守る全大阪連絡協議会(代表幹事 松本 晶行)・きょうされん大阪支部(支部長 山本 博之)・全国福祉保育労働組合大阪地方本部(執行委員長 水野 洋次郎)の三者が共同で10月中に実施の予定。
市町村支援費制度実施状況調査の概要
(回収率)
100%(33市11町村;8/22現在)であった。
(結果の概要)
1,申請の状況
(1)申請率
身体障害者 平均3.61%(市3.64,町村2.59)
、知的障害者 平均42.56%(市42.70,町村37.03)
障害児 平均19.41%(市19.23,町村27.18)
(2)決定率
身体障害者 平均96.71%(市96.57,町村100)
知的障害者 平均87.29%(市87.04,町村99.28)
障害児 平均99.02%(市99.41,町村87.16)
(3)変更申請率
身体障害者 平均16.19%(市16.49、町村4.42)
知的障害者 平均4.89%(市5.03,町村0.73)
障害児 平均5.82%(市5.91,町村3.16)
2,審査会等の設置
決定審査会や不服申請審査会等の設置状況は極めて低い。(決定審査会設置41.9%、不服審査会設置9.5%)
3,申請・調査
調査は訪問調査が中心(93.2%)ですが、調査員の体制は、2003年度から縮小されている。また相談の専用窓口の設置は9.1%、ケアプラン作成は39.5%、支援センターのこの面での位置づけは低い。
4,決定
市町村独自基準を設けている自治体は、31.7%、市レベルで多く、町村は圏域基準、サービス併用等に係わって、柔軟な対応は、町村部の方が小回りが利く。
個別の基準については、
+全身性障害者独自基準;4.5%(市3.0%、町村9.1%)
+身体介護要・不要基準;38.6%(市51.5%、町村0%)
+短期入所決定日数;36.4%となっている。(市42.4%、町村18.2%)
5,あっせん・調整・要請
調整会議の設置は低く、担当者の個別対応が中心(90.9%)、生活支援センターの設置は61.4%の自治体、しかし、整備計画のない自治体も(11.4%)、サービスの利用に大きな不安。
6,府単事業の実施
府の提起した単独事業の実施は、入所施設利用者のガイヘル制度(実施22.7%)以外は、市町村での事業化は極めて低調。(ケアマネ0%、短期入所送迎補助6.8%、児デイサービス推進4.5%)
(1) 短期入所送迎補助;実施6.8% 実施予定9.1% 実施しない38.6%
(2) ケアマネ推進事業;実施0% 予定2.3% しない68.2%
(3) 入所者ガイヘル ;実施22.7% 予定9.1% しない27.3%
(4) 児デイサービス推進事業;実施4.5% 予定9.1% しない50.0%
7,供給基盤整備
指定事業者整備で、目処がつかない自治体は、27.3%、デーサービスやショートスティ事業にも大きな不安。施設についても、通所施設の不足(41.5%)入所施設の不足(71.7%)と整備の遅れが目立つ。
8,今後の見通し
市町村での業務量の増加も深刻な(著しく増加52.3% 増加43.2%と総じて増加が感じられている。また今後も増加68.2%と予測されており、増員要求は必要79.5%と極めて高い)中で、今後の見通しについては、見通しつきにくい21.4%、制度改善を望む23.8%と不安を抱える自治体が約半数。
(見えてくる問題点)
制度実施にあたっての市町村の基本スタンス
(1) 制度の周知徹底時において、「措置制度時代の利用者へのサービス低下を招かない。」という姿勢から、旧サービス利用者を優先したこと、新規利用者についての情報提供が不十分であったこと。
(2) 旧前のサービス範囲の拡大等について周知徹底が図れなかったこと。
(3) また児童のサービスについては、窓口で「あなたは軽度だから利用できない。」「家族がいる場合は利用できない。」等の対応によって申請をあきらめたケース等も報告されている。
(4) 加えて制度活用への情報提供やけケアプラン作成の困難さ等も考えられる。
(市町村ガイドラインの意味)
ガイドラインの基準は、旧措置制度時代のサービス供給量基準の判定に用いられた、「支援の必要度」「日中活動の状況」「介護力」を基準にして、支給量上限を設定する方式が多く用いられている。この背景には、市町村財政の制限や供給基盤の整備状況の格差が前提としてあり、旧サービス量を超えれる財政と基盤の保証がない中で、一定の客観性を担保するための手法として用いられていると推察される。しかし、このガイドラインも、個別のケースの状況をみながらケアマネージメントによって柔軟に適用する自治体ときわめて機械的に対応する自治体など、活用に当たっての窓口の職員の力量に左右される状況も生まれていることは、きわめて大きな問題である。
(低調な府単事業の活用)
積極的施策としての期待も高かったが、実際に市町村での対応状況は、新制度でのサービス提供で精一杯の状況も反映してか、活用自治体は極めて少ない。
(遅れる供給基盤)
居宅生活支援に関しては、一定の事業者の参入が図られているとはいえ、その内容は、高齢者支援と障害者支援の相違点をどう理解し、円滑な支援を行えるか、一部には、その支援の困難さから指定事業者を返上する事業者も現れており、今後大きな問題となる可能性が高い。
一方、施設支援に関しては、通所で4割、入所で6割の自治体が不足していると回答するなど、深刻な整備状況が浮き彫りとなっている。
(深刻な市町村対応)
総じて、前回の準備段階から、一歩前進させる努力をしてきた自治体も、今後の見通しでは見通しつきにくい21.4%、制度改善を23.8%と半数近くの自治体が、見通しを持ちにくい現状があることもきわめて深刻な問題点といえる。
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