大阪障害者センター 壁ニュース

厚労省が、「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を配信!

「壁ニュース」テキスト版 2019/04/03

これで本当に人材対策につながるのか?
厚労省が、「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を配信!

 厚労省は、3/11、「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を配信しました。(※1)施設サービス2)居宅サービス3)医療系サービスの三分野別ガイドライン)これは、「第7期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護人材の需要を見ると、2020年度末には約216万人、2025年度末には約245万人が必要。2016年度の約190万人に加え、2020年度末までに約26万人、2025年度末までに約55万人、年間6万人程度の介護人材を確保する必要があるため、国においては、①介護職員の処遇改善、②多様な人材の確保・育成、③離職防止・定着促進・生産性向上、④介護職の魅力向上、⑤外国人材の受入環境整備など総合的な介護人材確保対策に取り組む。として、この間、外国人労働者の受け入れ等も含め、様々な人材対策を講じてきていますが、「地域医療介護総合確保基金」等を活用し、福祉現場の生産性向上の取り組みについての研究等を踏まえ、配信されたものです。新年度予算では、消費税財源とした「新しい経済政策パッケージ」の中で、介護福祉職員の処遇改善等も盛り込まれています。
 なお、今回のガイドラインを受けて、厚労省主導で「介護分野における生産性向上協議会」が設置され、生産性向上への取り組みを強化するとしています。

【ガイドラインのポイント】
○目的 業務改善に向けたノウハウの普及
・実際に業務改善に取り組む介護事業者を支援するため、業務改善の手引きを作成し、介護施設における業務改善に取り組むためのノウハウを普及する。
・効果的な普及のため、介護事業者団体等に業務改善の手引きを配布し、横展開を支援する。
○ねらい 業務改善の取組経験のない事業所でも取り組みやすくする道案内のツール
1.「介護サービスにおける業務改善」の上位目的は介護サービスの質の向上。取組を通じ楽しい職場・働きやすい職場が実現し介護で働く人のモチベーションが向上することにより、人材の定着・確保に繋がり、その結果、介護サービスの質の向上に結びつく考え。
2.業務改善の取組経験がない施設でも手軽に取り組みやすくする。
3.活動の流れや取組方法をステツプ形式で説明し、先進事例や本事業で創出した事例を用いて解決のステツフ゜を紹介。
4.介護施設の事例には介護職以外の人材の活用例や介護ロボットの活用例も掲截。例えば、シルバー人材、見守り機器など。
5.課題のみぇる化ツールとして「気づきシート」、「因果関係図」、「業務時間調査票」を紹介。
6.取組を「職場環境の整備」、「業務の明確化と役割分担(テクノロジーの活用)」、「情報共有の効率化」など7つに分類。
※業務改善とは一般的に、業務のやり方を工夫することで、現状の業務から「ムリ」「ムダ」「ムラ」を無くし、現状の業務をより安全に、正確に、効率的に行うことや、負担を軽くすることなどを目的として取り組む活動と言えます。
※介護サービスの業務改善の上位目的を「介護サービスの質の向上」とし、業務改善に取り組む意義は、人材育成とチームケアの質の向上、そして情報共有の効率化であると考えます。またこの3つの意義に資する取組を通して、楽しい職場・働きやすい職場を実現し、そこで働く人のモチベーションを向上することで、人材の定着・確保へつなげることを目指します。業務改善の目的を捉える観点は様々あり、例えば、適材適所の人員配置の実施や備品・消耗品の管理方法の見直しで職員の負担を減らしたり、介護の目的を明確化し見つめ直すことで自分の仕事の必要性を実感しモチベーションを向上させることなどが挙げられます。

○業務改善の取組
①職場環境の整備
※5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を行う。
②業務の明確化と役割分担(1)業務全体の流れを再構築
※業務を明確化し、適切な役割分担を行いケアの質を向上
②業務の明確化と役割分担(2)テクノロジーの活用
※課題にあった介護ロボット・センサー等の導入を行う。
③手順書の作成
※適切な申し送り事項を検討の上、標準化する。
④記録・報告様式の工夫
※介護記録の電子化を行い、情報の一元管理を行う。記録作成の負担が軽減。また、写真や動画を活用した利用者情報の共有が可能。
⑤情報共有の工夫
※インカムを職員に配布して、業務に当たる。タイムリーな情報共有ができ、対応が迅速化。
⑥OJTの仕組みづくり
※「他職員に対して教える」ことを教育する。標準的な手順に則って指導できるリーダーが育成できる。
⑦理念・行動指針の徹底
※理念・行動指針を全職員に伝え、徹底する。イレギュラーな事態に対しても、理念や行動指針に即した判断や行動ができる。
○ツール集:① 気づきシート、② 業務時間調査票、③ 業務時間調査 業務区分表、④ テーマ別計画書、⑤ 5Sシート

 ただし、こうした「介護・福祉における生産性向上」と言われるものが、本当にめざすべき「福祉・介護の姿」なのかという疑問とともに、本来の福祉労働とは何かを十分問うことなく、その生産性向上を進めることの是非も問われることとなります。
 もちろん業務の効率化等の工夫の必要性は十分検討に値するものですが、その効率化が利用者サイドにとった時本当に妥当なものなのかを十分考える必要があります。
 特に、福祉や介護は「対人関係労働」であることが大前提とならなければなりません。かつて、立教大学の浅井春夫氏は、福祉実践五つの原則として①ケア②選択③継続性④変革⑤価値の共有を上げました。とりわけケアについては、相互の信頼関係の確立という課題の重視を上げています。そうした意味からも、何をどう効率化するのかは、十分精査の必要なこととなるはずです。さらに、定着の問題を考える時、離職理由としての上図のような、調査があることも忘れてはなりません。
 現在は、介護事業でこうした取り組みが行われようとしていますが、障害福祉分野でも同様の事態の中で、こうした取り組みの拡大が図られることもありますし、同様に現場の職員の負担軽減等は、逆に先行して検討していくことも重要となるだけに、その取り組みの方向性については十分注目しておく必要がありそうです。