JDF権利条約パラレルレポート公開フォーラムin大阪を開催
障害者権利条約批准後の障害者団体の役割は?
~JDF権利条約パラレルレポート公開フォーラムIN大阪を開催~
障害者権利条約の批准国は、定期的に国連障害者権利委員会に、現状報告書を提出することになっていますが、この報告書を受けて、当事者団体等がパラレルレポートを提出し、こうした双方意見を建設的対話を行った上で、「総括所見」等を行うこととなっています。
日本は、批准後2016年に政府報告書が提出され、こうした報告を受けて、JDFを中心に「パラレルレポート」を特別委員会をつくり検討中ですが、この完成に向けて、大阪での公開フォーラムが2/13、阿倍野区民センターで開催されました。
フォーラムでは、JDFの阿部一彦さん(JDF代表・日身連会長)から、「障害者権利条約を暮らしに生かすために~パラレルレポート作成の取組み~」をテーマに基調講演が行われ、こうした取り組みの意義が語られました。
※パラレルレポートとは
条約の実行状況を締約国が 国連の障害者権利委員会に報告し、委員会が(必 要に応じて)追加の情報を求め(事前質問事項)、 締約国がそれに回答し、最終的に対面による質疑 (建設的対話)を行い、委員会として総括所見 (勧告)を出すものです。締約国はこの勧告を尊重して政策を改善し、次の定期報告に備えます。障害者団体など民間団体もパラレルレポートを 提出し、また直接委員会との話し合い(ブリー フイング)をもつなど、この審査過程に参加する ことができます。
【阿部報告概要】
○権利条約の歴史
・2006 国連総会で障害者権利条約採択
・2009~ 障害者権利条約締結のための条件整備
・2011 改正障害者基本法・施行
・2013 障害者総合支援法施行(障害者自立支援法の大幅な改正)
・2014.1 障害者権利条約批准
・2016 障害者差別解消法施行・障害者雇用促進法施行 差別禁止、合理的配慮の提供
・2016.6 障害者権利委員会へ日本の報告提出
・2020 障害者権利委員会で日本の審査(予定)
・障害者権利委員会からの総括所見
・2020 東京オリンピック・東京パラリンピック
○市民社会団体(CSO)によるパラレルレポートの意義
・障害者権利条約の施行状況に関する政府報告
↓
・(事前質問事項作成用の)パラレルレポートの提出
・国連・障害者権利委員会による事前質問事項
↓
・政府による回答
↓
・(建設的対話用の)パラレルレポートの提出
・建設的対話(国家審査)
・総括所見
・日本の障害者施策の改善・向上
○これまでの取り組みとこれから
【2017年】
・国連・障害者権利委員会の傍聴
・「JDFパラレルレポート準備会」発足 ・同準備会にて、レポートの骨子となる意見交換・集約の実施(第1条から条項ごとに各団体の意見や課題を出し合う)
【2018年】
・準備会にて、各条ごとの意見集約資料のとりまとめ
・「JDF障害者権利条約パラレルレポート特別委員会」発足
・意見集約した内容をベースにパラレルレポートの起草 ・関係団体との意見交換/公開フォーラムの開催など
【2019年】
・パラレルレポート(事前質問事項作成用)を権利委員会に提出
・権利委員会による事前質問事項を受けて、建設的対話用パラレルレポートの作成
○事前質問事項と総括所見の提案(例)
※施設及びサービス等の利用の容易さ
課題1 事前質問事項案
障害者に関わる法律上の概念として、障害者権利条約第9条に対応するアクセシビリティの概念が導入されているか。
・総括所見案
障害者権利条約第9条に対応する概念として、障害者に関わる包括的・基本的な法律の中に、アクセシビリティの概念を導入すること。
○「ユニバーサルデザイン2020行動計画」
※共生社会の実現に向けた大きな二つの柱
・心のバリアフリー
社会全体の人々の心の在り方を変えていくことが重要
1)学校教育における取組
2)企業等における「心のバリアフリー」の取組
3)地域における取組
(具体的施策)
①地域に根差した「心のバリアフリー」を広めるための取組
②災害時における避難行動要支援者に配慮した避難支援の在り方
4)国民全体に向けた取組
5)障害のある人による取組
「障害の社会モデル」を踏まえて自らの障害を理解し、社会的障壁を取り除く方法を相手に分かりやすく伝えることができるコミュニケーションスキルを身に付けることが重要
・ユニバーサルデザインの街づくり
誰もが安全で快適に移動できるユニバーサルデザインの街づくり
1)東京大会に向けた重点的なバリアフリー化
2)全国各地における高い水準のユニバーサルデザイン
移動しやすく生活しやすいユニバーサルデザインの街づくりに向けて、より一層、強力かつ総合的に、国、地方公共団体、民間が一体となって取組を進めていく必要
ユニバーサルデザインの街づくりは、災害発生時に障害のある人を含め人々の避難行動を円滑にすることから、災害に強くしなやかな国づくりの観点からも重要な取組
こうしたパラレルレポートを通じて、国策上の不備を但し、総括所見を導き出すことで、国の施策等の改善につなげるために取り組むもので、権利条約を私たちの暮らしに生かしていく上では極めて大切な取り組みであることが強調されました。
【シンポジュウム】
シンポでは、JDF特別委員会の尾上氏(DPI日本会議副議長)をコーディネータに、各団体からの課題提起と、JDFでのパラレルレポート上の取扱い等が行われました。
○各団体からの報告
①障害者基本法について(西尾元秀さん:障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議)
○進化させるもの
・「可能な限り」という表現の削除
国会審議で「基本的な方向に向けて最大限努力をする」「できないことの言い訳に使ってはならない」との確認答弁があり。
・「差別」「合理的配慮」の定義を追記
直接差別だけでなく、関連・間接差別や、合理的配慮の不提供も差別となることを明らかに。
・制度の谷間を作らない、包括的な「障害者」の定義へ
「継続的」の表現について、確認済みの国会答弁と合わせ「周期的・断続的なものを含む」という表現へ。
○新規に項目をおこすもの
・「障害のある女性」の項目の新設
障害者差別と性差別の複合的差別の実態把握と、解消への措置。
・「精神障害者」の項目の新設
自発的ではない入院の強制的措置を無くす、病床数の削減、地域移行の計画的推進。
・「相談」を「権利擁護」「意思決定支援」の項目へ発展
第23条の相談を、保護の対象ではなく権利の主体へ、という観点から変更する。また意思決定支援のための制度・仕組みを整備する。
・障害者権利委員会に条約監視機能を追加
「障害者基本計画」だけでなく、条約に関する法令・施策等の監視機能の追記を。
②大阪府手話言語条例について(大竹浩司さん:公益社団法人 大阪聴力障害者協会)
③精神の権利条約1 入院の問題(山本美雪さん:大阪精神障害者連絡会)
※強制医療による人身の自由の制限、隔離・身体拘束・閉鎖処遇は
本来、逮捕監禁罪にあたるもの
※隔離・身体拘束件数の増加
※精神医療審査会は強制入院のチェック機能なし
※課題は、人間としての尊厳、人権を軸とした地域精神保健へ転換すること
「あなたは尊厳のある人間です。あなたを理解して味方になりたい、
私たちはあなたを応援します」と伝え、安心できる環境を整え、信頼関係を作ることがケアの前提であるべきではないか
※薬と管理による精神科医療から、人間としての尊厳、人権を軸とした地域精神保健へ転換することが課題ではないか
④大家連の課題(交通費割引制度と医療費助成制度)(倉町公之:公益社団法人 大阪精神障害者家族会連合会)
⑤わかりやすい情報提供(当事者交えて)(宮下 愛さん 左古久代さん:育成会)
※「知ろう!広めよう!障害者の権利条約」(わかりやすい版作成の経過と今後の活用):HP等でダウンロードできる要になります。
⑥地域生活支援拠点について(井上泰司さん:障害者(児)を守る全大阪連絡協議会)
1:「家族介護中心型介護」の限界
※老障介護の限界から増える「養護者の虐待」
2:増え始める「ロングショート」の実態とは
◇ロングショート理由
・行動障害等による受け入れ拒否
・ショート利用等に対する不適応及び本人の納得がえられない
・入所施設空き待ちのための待機
3:進まぬ「地域生活支援拠点」事業
※実際の地域生活支援拠点整備は本当に進んでいない・大阪府では、6市のみ整備
※障害の重い人達の暮らしの場の支援の仕組みがあまりにも不十分
・グループホームの機能の限界と進まぬ整備
・入所施設機能の在り方の抜本的見直し
・地域における障害児者受け入れ体制の未成熟
⑦ODFで取り組んできていること(差別解消、医療費問題等)(細井清和さん:DF事務局)
【指定発言】
⑧交通問題 泉本徳秀 さん (きょうされん)
様々な課題が提起されましたが、JDFとしてこうした課題の共有化によって、運動の連携を図り、共同歩調をとっていくことで、施策の拡充に向けた取り組みが強化されることが求められます。